じゆうちょう

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グッバイメレル

4年近く履いたMerrellの靴を眺めていた。

21歳の春、米国のシアトルという町に滞在していた時に知り合いのYoakim(よぉーきむ)に貰ったハイキングシューズだった。

ある週末に親戚のダナおばちゃんの庭で竹を根こそぎ抜くバイトをすることになった。「土に汚れてもいい靴が必要ね」と言って近所のよぉーきむに聞いてくれた。身長が近かったので合いそうな靴を置いていてくれた。徒歩で試着しに向った。よぉーきむは奥さんと旅行中で家の鍵を空けていてくれたので玄関で試し履きをした。ピッタシだった。「ありがとう」と一筆置いて持ち帰った。結局靴は全く汚れなかった。遠い親戚とはいえ、バイト代を貰うのは少し申し訳なかったので、代わりに冷凍庫に入っていたイチゴソースチーズケーキ1つを貰った。

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日本に帰国して、山間部で木工の見習いを始めた時は仕事靴として大活躍してくれた。濡れた石の上を飛び歩いて沢を探検した時も、メレルを履いているといつも安心だった。ゴムに亀裂が入って穴がいくつか開いたけど、内側から出てくる美しさみたいなものが時間を重ねるごとに伝わってきた。

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